
ThoughtSpot(ソートスポット)がもたらす新たなデータ分析体験
ここ数年、スタートアップや大企業の間で「データをいつでも自由に扱える世界」が理想とされていますが、その実現には意外と大きなハードルがあると感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、「BIツール研究所の代表が謎のBIツールThoughtSpotを導入した話」というNote記事で一躍注目を集めたのがThoughtSpotです。興味を持った方なら、「何がそんなに違うのか?」と疑問に思うかもしれません。
実はThoughtSpotは、ガートナーのMagic QuadrantでTableauやLookerと同じLeadersに位置づけられる一方、日本ではまだあまり知られていません。しかしながら、このツールにしかない対話型分析の可能性を見逃すわけにはいかないと感じる人が増えています。そう思わせる理由はどこにあるのでしょうか。
1. 導入の背景と“謎のBIツール”への注目
従来からTableauやLooker StudioといったBIツールを活用していた企業の中には、さらなるデータ民主化を目指してThoughtSpotへ乗り換える動きが出ています。「対話型でデータ探索できる環境を作りたい」「現場のメンバーが自分のタイミングで分析できる仕組みがほしい」といったニーズに合致するからです。ただ、そこで気になるのは「導入コストやハードルは高くないのか?」「何か特別なスキルが必要なのでは?」といった疑問かもしれません。
実際のところ、ThoughtSpotは2018年頃からAI分野へ積極投資を進めており、2023年には「MODE」というコードファースト志向の分析ツールを買収するなど、グローバルな視点で成長を続けてきました。その中心にあるのが、自然言語検索を通じてデータ活用のハードルを下げるというアプローチ。単に見た目が新しいだけではなく、企業規模や業種を問わず、より多くの人がデータにアクセスしやすい環境を実現するのが大きな特徴です。加えて、SpotIQなどのAI機能を活用すれば、異常値の検知や将来予測なども自動で行われるため、専門知識がなくても貴重なインサイトを得られるのが魅力と言われ評価され始めています。
2. ThoughtSpotの特徴と活用ポイント
AI時代にふさわしいBIツールとして、ThoughtSpotが実現しようとしているのは「データを聞くだけで答えてくれる世界」だと言っても過言ではありません。ここで気になるのが、実際にどうやって自然言語入力をSQLクエリに変換しているのかという点かもしれません。ThoughtSpotはText-to-Token-to-SQLという技術を使い、ユーザーのあいまいな質問を的確なクエリへと変換し、必要なデータを引き出す仕組みを整えています。SpotIQなどのAI分析機能では、異常値の検出や根本要因の分析、さらには将来予測までサポートしてくれるため、多くのユーザーが自分でインサイトを得られるようになるのです。
LiveboardとThoughtspot Analytics
自分が気になった指標やグラフを素早く可視化し、それをチームと共有するためには、ダッシュボードの概念が欠かせません。ThoughtSpotではダッシュボードを「Liveboard」と呼び、検索やドラッグ&ドロップ操作のみで構築できます。レスポンシブデザインを採用しているので、PCからモバイルまで画面サイズに応じて見やすく配置されるのは嬉しいポイントではないでしょうか。

「ThoughtSpot Analytics」は、自然言語検索とAIによる自動分析を通じて、誰でも簡単に大規模データからインサイトを得られるようにするアナリティクスプラットフォームです。高度な設定や専門スキルを必要とせず、リアルタイムで検索や可視化が行えるため、スピーディな意思決定を可能にします。
さらに、「Embedded Analytics」の機能を活用すれば、社内アプリやウェブサービスにダッシュボードを埋め込めます。ここでカスタムUIを加えれば、ユーザーが別のツールにわざわざログインしなくても、アクセスしたサイトの画面上ですぐに検索や可視化を実行できるため、外部顧客向けにデータ分析機能を提供することも簡単です。
セマンティックエンジンとコードファーストな拡張
「自然言語検索ができても、ビジネスロジックの整合性はどう担保するの?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。そこで活躍するのが、LookerでいうLookML的なセマンティックレイヤーを担う、dbtやMODEとの連携です。データエンジニアがビジネスロジックをコードとして管理しながら、フロントのユーザーは自然言語検索やAsk Sage(対話型AI)を通じてデータ探索に集中できます。大規模組織でよく生じる「このメトリクスの定義、部署によって違わない?」という問題に対しても、コード管理を使って解決する方針を取れるのは、ThoughtSpotを選ぶ大きな理由の一つと言えるでしょう。
Self-Service Analyticsとコラボレーション
ThoughtSpotの狙いは、専門家だけでなく現場のビジネスパーソンにもデータを使ってもらうことです。自然言語検索やSpotIQの自動分析を備えることで、SQLや高度な分析スキルがない人でもインサイトを得られる環境が整います。レポート作成の待ち時間やIT部門のバックログに悩まされてきた企業にとっては、まさに理想的なセルフサービス分析の姿かもしれません。
しかも、クラウド上でレポートを共有・編集でき、コメント機能や変更履歴もサポートしているので、コラボレーションがスムーズに進みます。複数メンバーが同時にアクセスしてそれぞれの視点から分析を進め、気になる点をすぐに議論し合えるのは、迅速な意思決定に欠かせないポイントだと思います。
セキュリティとガバナンス
「データ活用を全社員に広げたいけれど、セキュリティやガバナンスはどう担保するんだろう?」という声もよく聞かれます。ThoughtSpotはシングルサインオンや多要素認証、ロールベースのアクセス管理などを通じて、大企業の厳しい要件にも対応できるよう設計されています。データの送受信を暗号化し、GDPRやHIPAAといった規制への適合もサポートするため、機密情報を扱う組織でも安心して導入しやすいのではないでしょうか。
3. 他のBIツールとの比較
「とはいえ、TableauやPower BI、Qlik Senseなど既存の有名BIツールとはどう違うんだろう?」と思う方も多いかもしれません。
その違いをひと目で理解するには、まず下記の比較表を見てみるのが手っ取り早いのではないでしょうか。
BIツール | 自然言語検索 | AI駆動の分析 | データモデリング | 視覚化機能 | ユーザーインターフェース |
---|---|---|---|---|---|
ThoughtSpot | あり | あり | 直感的で柔軟 | 高度な視覚化 | 直感的で使いやすい |
Tableau | 限定的 | 一部あり | 複雑な設定が必要 | 非常に強力 | 視覚的で魅力的 |
Power BI | 限定的 | 一部あり | 複雑な設定が必要 | 強力 | Microsoft製品に親しみやすい |
Qlik Sense | 限定的 | 一部あり | 柔軟だが技術的 | 高度な視覚化 | 直感的だが学習曲線あり |
上の表を眺めるとすぐにわかるように、ThoughtSpotが特に得意としているのは「自然言語検索」と「AI駆動の分析」です。TableauやQlik Senseは強力な視覚化機能で高い評価を得ていますが、その分、ビジュアルを作りこむのに時間や設定が必要になることも多いでしょう。Power BIはMicrosoft製品との親和性が魅力ですが、やはりエンタープライズ向けに深く作り込むとなると設定の煩雑さが課題になることもあります。一方でThoughtSpotは「検索するだけ」でグラフが自動生成され、さらにSpotIQが潜在的な異常値やパターンを発見してくれる点が非常に特徴的です。
自然言語検索
まず大きな特徴として挙げられるのが、ThoughtSpotが備える自然言語検索です。ユーザーは質問や依頼をほぼ会話のように入力するだけで、それをもとにシステムが最適なクエリを自動生成してくれます。この仕組みは、従来のBIツールで見られがちな「どのテーブルからどのカラムを引っ張ればよいのか」という前提知識を極力排除し、思いついた疑問をすぐに投げかけられる体験を生み出しています。もちろん、TableauやPower BIなどのツールにも“自然言語で質問できる”機能は存在しますが、多くの場合は限定的なキーワード検索にとどまり、複雑な設定を行ったり学習データを用意したりする必要があるなど、運用に手間がかかるシーンも少なくありません。一方、ThoughtSpotは創業当初から自然言語処理にフォーカスして開発されているため、あまり専門知識のないビジネスユーザーでも比較的スムーズに導入できる点が大きな違いだと感じます。
AI駆動の分析
ThoughtSpotでは、SpotIQというAIエンジンが検索履歴やユーザー操作を学習し、潜在的な異常値や隠れた関連性などを自動的に提示します。たとえば「売上データを見たい」という大まかな質問をしただけでも、関連する属性や期間をSpotIQが見つけ出し、ユーザーが見逃しがちなインサイトを提案してくれるのです。TableauやPower BI、Qlik Senseも機械学習の要素を含んだ機能を取り入れていますが、多くの場合、ユーザーが明示的に“このアルゴリズムを適用したい”などの設定を行わないと十分に結果が得られないパターンがあるかもしれません。その点、ThoughtSpotは“検索するだけでAIが働いてくれる”という体験を基本に据えており、特別な操作をせずともAIの支援を受けられるのが新鮮だといえます。
データモデリング
BIツールを導入する際、しばしば課題となるのが“ビジネスロジックや指標をいかに正しく管理するか”という点です。LookerなどはLookMLという仕組みを提供してきましたが、ThoughtSpotの場合はdbtやMODEといった外部のツールと連携しながら、コードベースでビジネスロジックを管理していく流れを推奨しています。ここで重要になるのが、ユーザーは自然言語検索を使いつつも、裏側ではエンジニアが定義した整合性の取れたモデルだけを参照しているという点です。TableauやPower BI、Qlik Senseでも複雑なデータモデリングは可能ですが、ツール内でルールを組み上げる際に設定が煩雑になったり、ドキュメント化が追いつかないケースが出てくることもあります。ThoughtSpotは外部のコード管理ツールに任せることで、シンプルな運用を実現しやすいのかもしれません。
視覚化機能
自然言語検索やAI機能に目が行きがちなThoughtSpotですが、ビジュアル面も大切な評価ポイントですよね。たとえばTableauやQlik Senseは“豊富なチャートテンプレートや洗練されたUI”を武器にしてきましたし、Power BIはMicrosoft製品との相性の良さや多様なビジュアル拡張が魅力とされています。それに対してThoughtSpotも検索結果をグラフで自動表示し、Liveboardでまとめることでダッシュボードを形作れるようになっています。高度なカスタマイズについてはほかのBIツールほどの自由度を感じないかもしれませんが、SpotIQの提案や自然言語検索との連携で“ビジュアルを変えたいときに自分で検索文を変えるだけ”という操作性は大きな強みだと思います。視覚化そのものを徹底的に突き詰めるよりも、対話型のデータ探索を支援する機能が重視されている印象を受けます。
ユーザーインターフェース
結局のところ、BIツールが組織に広まるかどうかはユーザーインターフェースの使いやすさに大きく左右されるかもしれません。TableauやPower BIは、“ドラッグ&ドロップでレイアウトを組み、ビジュアルを選んでデータを当てはめる”という流れが分かりやすい半面、機能が豊富すぎて最初に覚えることが多い印象もあります。
ThoughtSpotは“検索ボックスに入力する”という誰にでも馴染みのある行動を中心に据えているので、導入ハードルを下げる効果が期待されます。自然言語検索を補うGUIの設定画面も全体的に直感的に作られており、ユーザーが何をどう操作すればよいかが比較的理解しやすいようになっていると言えるでしょう。
4. 誰が使うのか
「AI駆動で自然言語検索ができるなんて、経営層だけが喜ぶんじゃないの?」と思う方もいるでしょう。しかし、データエンジニアやBIエンジニア、アナリストにも大きな恩恵があります。コードファーストな環境を整えたり、Embedded Analyticsで外部提供する機能を拡張したりする際、ThoughtSpotはAPI連携やモード連携を通じて柔軟に対応できるからです。結果として、現場レベルから経営層まで「レポートを待たずに自分でデータを扱える」というのが理想像なのかもしれません。
5. 料金プラン
ThoughtSpotの料金体系は「ThoughtSpot Analytics」と「ThoughtSpot Embedded」の2種類に分かれています。Small Companies向けのEssentialsは月額1,250ドルから始められますが、成長中の企業や大企業向けにはProやEnterpriseが用意されています。また、Embedded版でもDeveloperという無料プランがあるため、社内PoCやサービスへの組み込みをテストする場合に活用しやすいです。具体的な費用は企業のユーザー数や使用状況に応じて変動するので、導入時にはThoughtSpotへの問い合わせが必要になるでしょう。
6. まとめ
AI時代におけるBIツールとして、ThoughtSpotは自然言語検索や対話型AIを中心に“レポート待ちの解消”と“セルフサービス分析の促進”を強く押し進めています。既存のLookerやTableauなどと比べて何が革新的なのかといえば、誰でも検索感覚でデータにアクセスでき、SpotIQが自動で異常値や関連性を見つけてくれるところが大きいのではないでしょうか。さらに、dbtやMODEとの連携でコード管理されたビジネスロジックを土台にしながらも、初心者からエキスパートまで幅広く使える設計が興味深いです。
全社員にデータを開放し、リアルタイムで意思決定を行いたいと考える企業にとって、ThoughtSpotは非常に魅力的な選択肢になり得るでしょう。一度無料トライアルやデモを通じて、その対話型かつスピーディな分析体験を確かめてみれば、「謎のBIツール」に対するイメージが一変するかもしれません。そこには、従来の“待ち”の文化から抜け出し、データを思い通りに扱う未来が広がっているように思います。
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