なぜ今「スモールPMI」がAI時代の成功の鍵となるのか?データサイロ解消の新アプローチ

なぜ今「スモールPMI」がAI時代の成功の鍵となるのか?データサイロ解消の新アプローチ

DX推進の裏で進行する「データのサイロ化」という落とし穴

この10年、日本企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を合言葉に、SalesforceやSlack、Microsoft Teams、Google Workspaceなど、多種多様なソフトウェアやSaaSを矢継ぎ早に導入してきました。実際、IPA(情報処理推進機構)の調査では2023年度に日本企業の約73.7%が何らかのDXに取り組んでおり、前年の55.8%から大幅に増加したというデータがあります。

しかしこれらのツールは「業務効率を大幅にアップする」と期待されていた一方で、実際には組織内データが各システムに分断され、いわゆる「サイロ化」が進行してしまうケースが目立っています。

データが部門やチームごとに閉じてしまうと、本来目指すはずだった情報共有や意思決定の迅速化、新しい価値の創出に大きな支障が出るようになります。その結果、かえって間接業務が増え、現場が混乱するという残念な状況に陥ることもしばしば見受けられます。

データの「サイロ化」が生む本質的な問題

サイロ化とは、各部署がバラバラのシステムやプロセスを使い続けることで、組織全体としてデータの整合性が失われる状態を指します。いくら最新のAI技術を投入しても、データが点在したままでは本来の効果を生かせず、真にDXを推進するための足かせとなってしまいます。
こうした問題は、企業の合併・買収後に実施するPMI(Post Merger Integration)で直面する課題ともよく似ています。PMIでは、異なる企業文化やシステム、プロセスを統合し、新しい価値を生み出すための取り組みを行いますが、その難しさを過小評価して失敗してしまうケースが多いのが実情です。

ここからはこのPMIから見えるサイロ化の解決方法をお話していきます。

PMIに学ぶ段階的なデータ統合ステップ

企業がデータ統合に踏み切れない背景には、「統合は非常に複雑で、時間やコストが莫大にかかる」という認識があるからだと考えられます。PMIの現場では、その複雑さを解消するために「スモールPMI(小規模統合)」から始めるアプローチが推奨されています。

PMIの統合ステップの図

具体的には、以下のようなプロセスです。

スモールPMI(約1~3ヶ月)
・まずは2つほどの部署を対象にデータ統合を先行実施
・Excelやメールのやり取りを大幅に削減し、短期的な効果を明確化

統合効果の標準化・拡大準備(約2~3ヶ月)
・小規模統合の成功事例をテンプレート化し、再現性を高める
・社内に「これなら実現可能だ」という安心感を醸成

大規模展開とスケールアップ(3~6ヶ月)
・成功モデルを徐々に他部署へ広げる
・現場で得た具体的な成功体験により抵抗感を軽減

全体統合と新たな価値創出(半年~1年)
・全社的なデータ統合を実現し、分析や意思決定に活用
・経営レベルでデータドリブンな体制へ移行し、本質的なDXを推し進める

サイロ化解消のメリットと成功事例

データのサイロ化を解消し、社内データを横断的に統合・活用できるようになると、DXの効果は飛躍的に高まります。実際、海外のデータによるとデータに基づく意思決定を行う“インサイト主導型”の企業は、そうでない企業に比べて顧客獲得率が23倍、利益率も19倍高いとの分析もあります。 ここでは、データ統合により大きな成果を上げた具体的な企業事例をいくつか紹介します。

大手金融企業
– 分散していたデータを統合し、分析プロセスを標準化した結果、関連業務の工数を80%削減(160時間/月→32時間/月)することに成功しました。データ統合プロセスの改善により、月間で128時間分もの人的リソースを他の価値創出業務に振り向けられるようになった例です。

再生可能エネルギー企業(ENEOSリニューアブル・エナジー社)
– 発電所ごとにバラバラだった発電データをクラウド上で一元統合し分析できる基盤を構築。その結果、別々の手段で構築した場合と比べて半分以下の工数で全発電所のデータ連携を実現し、天候データや設備稼働情報も組み合わせた高度な発電量予測が可能となりました。データ統合により、新たなインサイトを得て事業成長につなげた好例です。

外部のAIツール導入だけでは解決しない理由

ChatGPTをはじめとしたAIツールを「DXの切り札」として導入する企業が急増していますが、あくまでツールは“手段”のひとつでしかありません。サイロ化されたデータや運用ルールを整備しないままAIに頼ろうとしても、根本的な問題解決には至らないという点は強調しておく必要があります。

さらに、部署ごとに異なるシステムやデータ定義を使っていると、AIが分析する以前の段階でデータ統合の作業負荷が大きくなり、プロジェクトの遅延やコスト超過のリスクも高まります。システム乱立によって起きた“新たなサイロ”をAIが助長してしまう可能性すらあるでしょう。DXのゴールが「業務プロセスの抜本的な改善」や「データに基づく経営判断の迅速化」にある以上、まず取り組むべきはデータ活用の土台となる統合基盤を整えることです。

こうした基盤整備が整ってこそ、AIを含む先進技術の導入が本来のパフォーマンスを発揮し、短期間でROIの最大化が見込めるようになります。特に大量のテキスト情報や部門間のやり取りが多い企業ほど、AI導入前のサイロ解消が極めて重要です。

今、やらなければDX推進において企業間競争で取り残される

この課題を後回しにしていると、DXレースの中で他社に大きく水をあけられる可能性が高まります。データ統合を基盤とした経営判断のスピードと精度が、企業の競争優位性を左右する時代がすぐそこまで来ています。

小さくても「まずはやってみる」統合の成功体験を積み重ねて、ROIをきちんと可視化しながら拡大していくアプローチこそが、DX推進を確かなものにする鍵といえるでしょう。

sento.groupが提供する価値

sento.groupは、スモールPMIの考え方を取り入れた独自の統合モデルを通じて、クライアントが「まずは小さな成功事例」を手に入れ、それを堅実に拡大していくプロセスを伴走型でサポートしています。

最初の一歩を踏み出し、小さな成果を積み重ねることで、企業全体のデータ統合と価値創出へと着実に近づいていく。その基盤作りこそが、これからのDX推進で不可欠となるのです!

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