
1. 玉拾いとは?SaaS業務における比喩としての活用
ビジネス現場での「玉拾い」をしているみなさん!!!いつもお疲れさまです!!
ん??でも、ちょっと待ってください。おかしくないですか?
「玉拾い」は、ビジネスでは「誰がやるとも決まっていなくて、こぼれ落ちてしまった小さな仕事を代わりにやること」として使われる比喩です。言い換えれば、本来の担当者がいない雑多な作業を自主的に引き受けること。
玉拾いをしてくれるメンバー、もちろんすごいですし、尊敬しますよ。でも、これって単なる技術的な負債になっていないですか?なんてこと、考えたことありますか?
SaaSを使った業務環境では、本来システム化されて効率化されるはずの仕事の合間に、この「玉拾い」的な間接業務が発生してしまうことがあるんです。一見、SaaSを導入すれば業務が自動化・効率化されるはずなのに、実際には複数のSaaSツールの“隙間”に細かな手作業が残っちゃうんですよね。それが、コートに転がるボールみたいに放置されると、誰かが拾わないといけなくて、結局その負担が担当者にかかっちゃう。この記事では、SaaS導入企業でよくある「玉拾い」業務がどうして発生するのか、その問題点、そして解決策について、実際の例を交えながら解説していきます。
2. SaaSが増えるほど間接業務が増える理由
複数のSaaSを導入すると便利になる反面、システムの数だけ間接的な手作業も増えがちです。ではなぜSaaSが増えると「玉拾い」的な間接業務が発生するのでしょうか?主な理由を見ていきます。
システム間のデータ連携が不完全
SaaSごとにデータを管理していると、サービス間で情報が自動連携できないケースがあります。その結果、あるシステムから別のシステムへデータを手動で転記・入力する必要が生じます。例えば営業支援ツールのデータを経理システムに手作業で入力し直す、といった場面です。当然ながら人手での入力作業はミスの原因にもなります。実際、「アプリ間のデータコピー&ペーストといった手作業は高価なミスにつながりやすい」と指摘されています。このようにSaaS間の統合が不十分だと、“つなぎ”の手作業(玉拾い)が増えるのです。
引用元:MERGE – The ultimate guide to SaaS integration
SaaSで管理されていない業務フローの存在
どんなSaaSにも万能ではない部分があり、システム化されていない業務フローが社内に残っていることがあります。たとえば、請求処理は会計SaaSで管理していても、社内承認プロセスはメールや紙で行っている、といったケースです。このようなSaaSの境界からこぼれるフローは、自前のExcel台帳や手作業のチェックリストで補完するしかなく、担当者が逐一「玉拾い」する状況になりがちです。複数のSaaSを使っていても、その間をつなぐ非公式な作業が発生すると、結果的に人の手を介した間接業務が増えてしまいます。
専門外の作業が発生しやすい環境
SaaSが増えると、「このツールとあのツールを繋ぐスクリプトを作る」「各種アカウントをメンテナンスする」など、従業員の専門外のIT作業が発生することもあります。本来の職務ではないこれらの作業も立派な「玉拾い」業務です。例えば現場のマーケ担当者がデータをエクスポートして加工する、総務担当者がSlackのワークスペース管理に奔走する、といった具合に、情シス(情報システム部門)以外の社員が雑多なIT対応に追われることがあります。また、SaaS管理者である情シス自身が、増え続けるSaaSのアカウント管理やサポート対応に追われて本来の企画業務に手が回らないケースもあります。このように専門外のタスクが散在すると、本来果たすべきコア業務の陰で間接業務が積み重なってしまうのです。
3. 具体的なSaaSの例と発生する間接業務
ここからは、具体的なSaaSツールを例に「玉拾い」的な間接業務がどのように発生するかを見ていきましょう。
Salesforce:データ入力・更新の手作業
営業支援や顧客管理に用いられる代表的SaaSがSalesforceです。強力なCRMですが、正確なデータを蓄積するには現場での入力作業が欠かせません。実際、Salesforce管理者の約98%が「ユーザー(営業担当者)がデータを入力してくれない」という共通課題を抱えているとも言われています。入力が漏れれば誰かが後から埋める必要があり、これ自体が「玉拾い」作業となります。また、入力されたデータも各担当者によってバラバラになりがちです。その結果、例えばどのマーケティング施策から案件が生まれたかを分析しようとしても、データが不揃いなために人手での整理・照合作業が必要になるケースもあります。このようにSalesforceを導入していても、データ投入やクレンジングといった手間が残存することがあるのです。
Slack:通知・タスク管理の整理不足
社内チャットのSlackはコミュニケーション効率を飛躍的に高めてくれるSaaSですが、その反面、メッセージが多すぎて重要な連絡やタスクが埋もれてしまうことがあります。Slack自体にはタスク管理機能が限定的なため、「〇〇さん、この件対応お願いします」といった依頼がそのまま流れてしまうと、後で見逃しや抜け漏れが発生しかねません。現場ではメッセージにピン留めをしたりブックマークを活用したりと工夫しますが、それも担当者の手間を増やす間接業務と言えます。実際、「Slackのメッセージから生じたタスクを見失わないように別途ツール連携する」「大量の通知を手作業で整理する」といった玉拾い的な管理作業が発生しがちです。Slack導入後は情報共有は円滑になりますが、情報過多を整理整頓する新たな手間が発生する点に注意が必要です。
HubSpot:マーケティングデータの統合作業
マーケティングオートメーション(MA)ツールのHubSpotも、多くの企業で導入が進んでいるSaaSです。HubSpot単体でもマーケから営業への引き渡しまで管理できますが、現実には既存のCRM(例えばSalesforce)や別の分析ツールと併用しているケースも多く、データの一元化に課題が生じることがあります。例えば、HubSpotで獲得したリード情報をSalesforceに取り込む際に手動でCSVインポートを行ったり、それぞれのシステムのレポートを照らし合わせてマーケティング施策の効果を評価したりする場合です。あるマーケティング担当者は、「キャンペーン別の効果を見たいがデータが汚いため手作業で整理している」と述べています。また、手作業でのデータ入力はエラーが発生しやすく、判断ミスの原因にもなり得ます。HubSpot自体は便利でも、他システムとの連携が不十分だとこのようなデータ統合の“玉拾い”作業が発生してしまうのです。
4. 間接業務(玉拾い)がもたらす問題点
このような「玉拾い」間接業務が増えてしまうと、組織にはどんな悪影響があるのでしょうか。主な問題点を3つ挙げます。
- 業務の属人化:特定の人だけがその雑多な作業のやり方を知っている、という状態になりがちです。一人の社員に頼り切りになると、その人が休んだり退職した際に業務が滞留するリスクがあります。また、ブラックボックス化した仕事は他の人が手伝ったり改善提案したりできず、組織的な知見も蓄積しません。
- チームの生産性低下:小さな手作業とはいえ積み重なれば大きなロスです。実際、調査では40%以上の労働者が週の四分の一以上を反復的な手作業に費やしていると報告されています。本来クリエイティブに使える時間が、こうした付随作業に奪われることで、チーム全体の生産性が落ちてしまいます。また、手作業によるミス対応や確認作業が増えることで、余計なストレスと手間がかかり、重要業務への集中力も削がれます。
- 責任の所在が不明確になる:間接業務は往々にして「誰がやるか決まっていない」ため放置されがちです。その結果、ミスや抜け漏れが起きても「誰の責任でもない」状況になり、問題解決が後手に回ります。例えば、データの二重入力漏れで顧客対応に支障が出ても、明確な担当不在だと原因追及や再発防止策が取りにくくなります。属人的かつグレーな運用は、いざトラブルが起きた際に組織として機能不全を招く恐れがあります。
それではこのような間接業務の問題点はどのようにして解決できるのでしょうか?
5. 解決策:SaaSの間接業務を減らす方法
では、こうしたSaaS間接業務の「玉拾い」を減らすにはどうすればよいでしょうか。以下に具体的な解決策を紹介します。
データ連携ルールを明確化する
まず、システム間のデータ連携方針を決め、ルール化することが重要です。どのSaaSをマスターデータの源泉(シングルソース・オブ・トゥルース)とし、どの情報をどのタイミングで他のシステムへ連携するかを明確に定めます。必要に応じて、iPaaS(クラウド間連携ツール)やRPAを活用し、手作業を自動化できるところは自動化しましょう。データ連携の仕組みを整備すれば、手入力の工数が減りヒューマンエラーも防止できます。例えば、HubSpotとSalesforce間で顧客データをリアルタイム同期するようにすれば、「あとでExcelにまとめて取り込む」といった玉拾い作業を省けます。システム同士をしっかり繋ぎ込み、“漏れ”を作らない設計を行うことが根本対策となります。
運用担当者・窓口を明確にする
次に、各SaaSやその間のプロセスにおいて誰が最終的な運用責任を持つかを決めておくことも大切です。明確な担当者(=窓口)が決まっていれば、「誰もケアしないタスク」が発生しにくくなります。例えば、Salesforceと他システムのデータ突合せは営業管理部が責任を持つ、Slackで流れるタスクの管理はプロジェクトマネージャーがチェックする、といったように役割分担を事前に取り決めておきます。この担当者は単に作業するだけでなく、「仕組み上この手間を省けないか?」とプロセス改善を考える視点も持つと良いでしょう。社内で玉拾いが発生している領域があるなら、まずその拾い手を正式に決めて権限と責任を与えることで、属人化や責任不在の状態を避けられます。
業務プロセスを再設計する
SaaS導入に合わせて、業務フロー自体を見直す(リデザインする)ことも欠かせません。便利なツールに旧来の非効率な手順をそのまま乗せても効果は半減します。SaaSの効果を最大限に引き出すには、既存の業務プロセスを見直し最適な形に再構築する必要があります。例えば、承認フローを紙から電子化する際に、これまで二重チェックで発生していた手作業を省くようにフローを簡素化する、といったことです。SaaS導入時には現場の声を聞き、「このステップは本当に必要か?」「SaaS上で完結できないか?」を検討しましょう。業務プロセスそのものを磨き上げることで、「玉拾い」すべき雑務がそもそも発生しないようにできます。
スモールデータを活用したSaaS最適化の視点
近年は「ビッグデータ」分析がもてはやされていますが、SaaS運用の現場改善にはむしろ「スモールデータ」の活用が有効です。ここで言うスモールデータとは、社内の業務データなど比較的小規模で構造化されたデータのことで、販売実績や顧客対応履歴、業務ログのような現場の業務改善やオペレーション最適化に役立つ情報を指します。例えば、「何件のレコードが手入力で修正されたか」「Slack上で何件の依頼が未完了のまま放置されたか」といった小さなデータを計測・分析する**ことで、玉拾い発生箇所を定量的に把握できます。スモールデータは扱いやすく、専門のデータサイエンティストでなくともExcel等で十分分析可能です。こうした身近なデータに目を向け、継続的に改善策に反映していくことで、SaaS導入効果を細部まで最適化し、結果的に間接業務の削減につなげることができます。
6. まとめ:SaaS導入時に玉拾いを最小化する工夫
SaaSを導入・活用する企業にとって、各ツールの“間”に発生する「玉拾い」的な間接業務をいかに減らすかは重要な課題です。システム間の連携不足やフローの綻びから生じる手作業を放置すると、生産性の低下や属人化といった問題が積み重なってしまいます。本記事で紹介したように、データ連携の仕組みづくり、担当の明確化、業務プロセス再設計、そしてスモールデータの活用による継続的な改善を行うことで、玉拾いは着実に減らしていくことが可能です。
せっかく優れたSaaSを導入しても、その真価が発揮されないのは「もったいない」です。雑多な間接業務に忙殺されていては、SaaS本来のメリットである業務効率化や生産性向上も十分に得られません。逆に言えば、玉拾いを最小化する工夫を凝らすことで、SaaS導入のROI(投資対効果)を最大化できるのです。SaaS運用に携わる皆さんも、自社の現場でボールが転がったままになっていないかぜひ点検し、小さな改善を積み重ねて「玉拾いゼロ」の快適な業務環境を目指してみてください。
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