Google Agentspaceとは?複数のSaaSからAIエージェント化させる次世代AIプラットフォームの新たな可能性

アイキャッチ、Google Agentspaceとは?

1. はじめに(概要・結論)

近年、企業内に蓄積されるデータやドキュメントは爆発的に増え続けています。しかし、多様なクラウドサービス(Slack、SharePoint、Googleドライブ、Jiraなど)に散在する情報を効率的に検索・活用するのは至難の業です。

Google Agentspace は、Google独自の高度な検索技術とAIモデル(Gemini、Imagen、Veoなど)を組み合わせ、企業内外のデータを横断的に扱える新しいプラットフォームとして登場しました。テキスト・画像・動画・音声といったマルチモーダルに対応し、データ分析からコンテンツ生成までを一括サポートします。

結論として、Google Agentspaceは“すべての情報源を繋げるAIプラットフォーム”として、あらゆる部署やプロジェクトの効率化と生産性向上を大きく期待できるソリューションと言えるでしょう。本記事では、背景や意義、機能の概要から動画で紹介された事例までを一挙に整理し、最後に導入プロセスや今後の展開、また注意点についてもお伝えしていきます。

なお、2025/01/17にGoogle社に問い合わせを行ったところ、契約ステップや料金、デモ環境の共有などはまだ公開できないとのことでした。

公式の情報に関しましてはGoogle Cloudホームページをご確認ください。

2. Google Agentspaceとは?

2-1. 統合検索×生成AIで業務を加速

Google Agentspaceは、企業内で利用する複数のクラウドサービスやシステムを一括検索し、自然言語での質問・要望に応じてデータを要約・生成してくれるAIプラットフォームです。企業に特化した高度な検索機能を備え、セキュリティやアクセス権管理にも十分配慮されている点が特徴です。

2-2. マルチモーダル対応の強み

テキストだけでなく、画像・音声・動画といったあらゆるメディアを検索・生成・要約できるため、資料作成やクリエイティブの段取りを大幅に効率化します。例えば、製品写真の背景差し替えや、簡単なプロモーション動画の作成もAIでサクッと行えるのが大きな強みです。

2-3. 企業向けに最適化された機能

  • 高度なアクセスコントロールとセキュリティ:大規模組織での導入を想定し、部門や役職別に検索可能な情報を細かく制限することができます。
  • ローコード対応のエージェント構築(Coming Soon):開発担当者だけでなく、現場ユーザーが独自のAIワークフローを構築可能になる予定です。
  • Google品質の検索技術:社内のデータだけでなく、Web検索や自社と提携するサードパーティデータなど、広範囲の情報ソースを統合的に扱えます。

3. 背景と意義

3-1. 多様化する情報源と検索ニーズ

企業の情報源は、メールやチャットツール、ドキュメントストレージ、カスタマー管理システムなど多岐にわたります。従来、各部門の担当者は独自のクラウドサービスを使用していたため、必要資料を探し当てるだけでも大きな手間と時間を要していました。

3-2. ビッグデータだけでなく“スモールデータ”も重要

近年はビッグデータ解析が注目される一方で、部門内のメモや限定的なプロジェクト記録などの“小さなデータ”にも重要な情報が潜んでいます。Google Agentspaceはこうしたスモールデータを含め、あらゆるデータを俯瞰して検索・要約できる点が強みです。

結果として、意思決定のスピードや質を高め、イノベーションを促進する土台となり得ます。

4. スモールデータとは何か

スモールデータとは、営業や勤怠、日報など、企業内で日々生成される小規模な情報を指します。AI時代には、大量のビッグデータだけでなく、こうした“小さな”データこそが重要なコンテキストとなり、短期間で業務改善や意思決定の質を高める鍵になります。

スモールデータは量的には大きくないものの、担当者にとっては“日々の業務を左右する重要な情報”を含んでいるケースが少なくありません。

Google Agentspaceはこうした小規模データも含め、組織全体のデータを俯瞰しながら一括で検索・生成を行える点が特徴です。

5. 具体的な定義・手法の解説

5-1. Google Agentspaceの全体像

ポイント:

  • AIモデル連携:Gemini、Imagen、Veoなどにより、テキスト・画像・動画・音声を理解・生成。
  • 統合検索:Slack、SharePoint、Googleドライブ、Jiraなど複数サービスのデータを横断的に検索。
  • ユーザー権限・セキュリティ:IT管理者によるアクセスコントロールを実装。
  • カスタムエージェント(ローコード対応/coming soon):ユーザー自身が特化型エージェントを構築可能。

5-2. 情報検索から生成・要約までの流れ

ここでは、デモ動画で紹介された一連のフローをもとに、情報検索から生成・要約、そして社内共有までどのように進むのかを見ていきましょう。


1. 導入・ログインシーン

  • Googleドライブや SharePoint、Slack など、企業全体で利用しているデータソースが一覧表示

まず、利用者は Agentspace のダッシュボード画面でログインします。企業が活用しているクラウドサービスやストレージがひと目で分かるだけでなく、横断検索の仕組みにより、どのデータがどこにあっても一括で検索可能です。

2. ブランドガイドラインや既存資料の検索

  • ユーザーがキーワードを入力し、過去のプレスリリースやブランドマニュアルなどを一括検索
  • NotebookLM が要点を自動でまとめ、重要ドキュメントを“優先度高”にピン留め
  • 膨大なファイルをチェックする手間が省け、すばやく資料を絞り込める

入力したキーワードに基づき、過去のプレスリリースやブランドガイドラインなどが瞬時にリストアップされます。さらに NotebookLM が自動要約を行い、膨大なファイルをいちいち開かずとも要点を短時間で把握できるのがポイントです。必要な資料や関連ドキュメントが絞り込まれたら、「優先度高」としてピン留めしておけるため、リサーチ効率が格段に向上します。

3. ブランドガイドラインの内容確認・メディア素材収集

  • エージェントが検索結果を要約表示し、主要ポイントだけを抜粋
  • SharePoint フォルダ内のロゴ画像やデザインテンプレートをサムネイル表示
  • 必要な素材をそのまま会話に加え、ワンクリックで取り込み

Agentspace のエージェントは、検索結果を要約表示するだけでなく、重要な部分を抜粋して提示してくれます。SharePoint に保存されているロゴ画像やデザインテンプレートもサムネイルでプレビュー可能なので、どの素材を使えばいいのかがすぐにわかり、ワンクリックで会話に取り込むことが可能です。

4. プレスリリース草稿の作成依頼

  • 「新製品リリース文を作ってほしい」と自然言語で依頼
  • AI がコラボ情報や製品スペックなどをマルチステップで収集し、数分でドラフトを用意
  • 数時間~数日かかっていた作業を、AI エージェントが効率化か

ユーザーが「新製品のプレスリリースを作成してほしい」とリクエストすると、Agentspace 上のエージェントがコラボ先の情報や製品のスペックなどを自動的にまとめ上げます。これまでマーケティング担当が複数ドキュメントを開いて苦労していた時間が、わずか数分に短縮されるのは大きなメリットです。

– マルチステッププランニングと要約

この段階では、マルチステッププランニングと呼ばれる処理をエージェントが行います。企業のブランドポリシーや社内ルール、承認フローなどを踏まえて表現を微調整し、ほぼ仕上がりに近いドラフトが提案されます。担当者は数カ所の文言修正をするだけで済むため、全体の執筆フローを大幅に効率化できるのです。

7. 画像生成や背景差し替え

  • 「スパ風の背景に変えて」「アニメーションを付けたい」などの要望も自然言語で指定
  • Imagen や Veo などの AI モデルが自動で処理し、プレビューを即座に表示

プレスリリースに添える画像や動画も、Agentspace 上でAIに依頼するだけ。背景を差し替えたり製品アニメーションを生成したりといった高度な編集も、自然言語で指示を出すだけで完了します。専門ソフトを使う必要がなく、ビジュアル表現を素早く試せるのは大きな利点です。

8. 生成されたメディアを社内共有

  • 完成した画像や動画を、ソーシャルメディア担当や営業チームなどに適宜送信
  • エージェントが送信先候補を提示し、形式や宛先を自動で最適化

出来上がったコンテンツをどのチームと共有すべきか、エージェントが提案してくれます。担当者の宛先や適切なファイル形式も自動で調整されるため、余計な手間がかかりません。社内外のコミュニケーションを円滑に進められるのは、エージェントが持つ知見と連携機能のおかげです。

9. 音声要約で最終確認

  • NotebookLM のオーディオサマリー機能を使い、リリース内容を耳でチェック
  • 移動や他の業務をしながらでも要点を把握でき、マルチタスクをサポート
  • 情報整理から最終共有まで、一連のフローを AI が強力にバックアップ

最後に、NotebookLM が音声要約を提供してくれるため、移動時間や作業の合間に「耳で内容を確認」できます。デスクに張り付いて資料を読む必要がないので、限られた時間をさらに有効活用できます。

6. 具体的な要素

  1. マルチモーダル対応 テキスト・音声・画像・動画すべてに対して検索・生成・要約が可能。製品写真の背景差し替えや、動画の簡易編集にも応用できます。
  2. 拡張性の高い検索連携 Googleの検索技術を活かし、既存のドライブやConfluence、SharePointなどのプラットフォーム、そして新たに登場するデータソースにも対応予定。
  3. AIアシスタントと対話的インターフェース 質問を投げかけると、エージェントが複数のステップを踏んで計画・作業を自動化。繰り返し作業の効率化や人的ミスの削減が期待できます。
  4. ユーザーアクセスコントロール 社内ごとの機密区分や役職階層に応じて、検索できる情報や生成可能な範囲をコントロール。企業ユースを意識したセキュリティ設計が特徴です。

7. Agentspaceの使い方:BIや経営戦略への活用

  • 1. BIツールとしての分析・レポート作成
    スプレッドシートやBigQueryなどのデータを横断的に取り込み、自然言語でレポートやグラフを自動生成。エージェントによる要約やインサイト提示により、数字の羅列を素早く可視化できます。
  • 2. 経営戦略への傾向分析
    複数部門のデータをまとめて傾向やリスク要因を洗い出し、長期的な売上トレンドや市場動向をリアルタイムで把握。意思決定のスピードと質を高める一助になります。
  • 3. 顧客データの分析・カスタマーインサイト抽出
    CRMシステムのデータを横断検索し、顧客の購入履歴や問い合わせ内容から満足度や離脱要因を解析。マーケティング施策やサポート改善の具体策を得やすくなります。
  • 4. BIデータを用いた高度なインサイト活用
    企業独自のKPI管理や戦略レポートをAgentspace上で自動化し、次のアクションプランをAIが提案。ダッシュボード感覚で各部署の最新状況をモニタリングでき、会議資料作成や戦略シミュレーションの効率化にも役立ちます。

8. 今後の展開・問い合わせ先

Google Agentspace は今後、さらなる機能拡張が予定されており、特にビジュアルコンテンツ生成の精度向上ローコードエージェント構築機能の充実が注目されています。

企業内外の最新動向を踏まえながら、より高度なマルチモーダル対応リアルタイム翻訳などが実装される可能性も高いでしょう。

9. Google Agentspaceにおける注意点

Google Agentspace は、多様なクラウドサービスやツールに散在するデータを横断検索し、生産性を高めるポテンシャルを秘めています。

しかし、連携が可能なのはあくまでGoogleや一部のSaaSでAPIが公開されているサービスに限られる点に注意が必要です。オンプレミスのローカル環境にデータがあったり、API対応していないSaaSを使っていたりすると、Agentspaceに情報を取り込みづらくなります。結果的に肝心なコンテキストが欠けてしまい、「便利そうだけど、思ったほど業務効率化にならない」という状況に陥りかねません。

今後、AIツールはますます増えていきます。特に事業責任者や管理職の方にとっては、“たくさん出てくるAIツールをどう取捨選択し使い分けるか”というマインドセットが重要です。新しいツールが出るたびに「へぇ、便利だね」で終わってしまわないよう、費用対効果を測定し、組織全体の生産性を高める実装計画を立てていく必要があります。

10. 気になる疑問:よくある質問

Q1. Google Agentspaceを使うと、データがGoogleのAIモデルに学習されてしまうの?

A. 基本的には学習されません。

Googleが提供する企業向けのVertex AIなどと同様、完全にクロージングでAIには学習されず、社内データがGoogleのAIモデル(Geminiなど)に学習として取り込まれない仕組みが用意される見込みです。実際にGoogle社担当者からもAgentspaceもVertex AIと同じようなポリシーになる予定との発言がありました。

Q2. Agentspaceはいつリリースされる予定ですか?

A. 正式なリリース日程はまだ公表されていません。

2025年3月ごろという噂も一部では囁かれていますが、公式の発表はなく、実際にその時期にリリースされるかどうかは不透明です。最新情報はGoogle Cloud公式サイトやパートナー企業からの案内、またはGoogleのイベント等で逐次チェックされることをおすすめします。

まとめ:Google Agentspaceがもたらす未来

企業のデータ利活用が進む中、Google Agentspace は部門や業務ツール間に点在する情報を一元化し、自然言語での対話を通じて必要な資料を素早く提供してくれます。これまで大きな課題だった「情報の分断」や「検索に要する時間の増大」を解消することで、従業員はよりクリエイティブな業務に集中できるでしょう。

一方で、AIツールは今後ますます多様化・高度化していくことが予想されます。「あれもこれも便利そう」とすべてを導入してしまうと、かえって現場が混乱したり、投資コストに見合わない結果に終わるリスクも考えられます。必要な機能を見極めながら“取捨選択”し、組織の目的や現状のデータ環境に合った形で導入を最適化することが重要です。

今後、Google Agentspace がビジネスの現場でどのように定着し、働き方をどこまで変えていくのか、ますます注目されるでしょう。新しいツールとしての導入効果はもちろんのこと、そこから生まれるイノベーションが、組織全体を大きく成長させる可能性を秘めています。データ管理の見直しやツール選定のプロセスを通じて、組織にとって本当に役立つソリューションを見定めることが、今後の大きな鍵と言えるでしょう。

お問い合わせ先

会社名:sento.group合同会社
担当者:和島 祐生 (Yuki Wajima)
E-mail:yumori.chisato@sento.group
URLhttps://sento.group