1. ノーコードデータベース「Airtable」とは?
近年、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの「表計算ソフト」以上の柔軟性を求める声が高まっています。例えば業務フローの自動化や複数人での共同編集、データベース的な関係性の管理など、表計算ソフトの枠を超えた要件が増えているためです。
そんな背景から注目を集めているのが、ノーコードデータベースの世界。なかでも「Airtable」は、表計算ライクな操作感でありながら本格的なデータベース機能を搭載し、プログラミング不要でカスタマイズや自動化が可能です。
本記事では、Airtableの主な特徴を紹介し、使い始めたばかりのユーザーがつまずきやすいポイントや、特に便利なFormula機能について詳しく解説します。
- 主要な特徴の比較
- Airtable初心者がつまずきやすいポイントと対処法
- AirtableのFormula機能の使い方や注意点
をまとめて解説します。
2. Airtableの主な特徴
Airtableは、スプレッドシートの操作性とリレーショナルデータベースの柔軟性を兼ね備えたノーコードツールです。視覚的にわかりやすいUIや豊富な連携機能により、効率的なデータ管理やプロジェクト管理を実現します。
2.1. リレーショナルデータベースが簡単に構築できる
- 直感的なUI – スプレッドシート感覚でテーブル同士を関連付けられ、視覚的にリレーションを設定できる
- 多様なデータ型 – テキスト、チェックボックス、画像添付など、さまざまなフィールド形式を選択可能
- 表示形式の切り替え – グリッドビュー・カンバン・カレンダーなどにワンクリックで切り替えてデータを閲覧・整理できる
2.2. 多彩なAPI連携・インテグレーション
- RESTful APIの提供 – JSON形式でデータをやり取りでき、外部システムとの統合がスムーズ
- 自動データ更新や取得 – API経由でデータを自動追加・更新、他サービスから必要な情報を取り込み可能
- 連携先の豊富さ – Slack、Google Workspace、Zapierなど、多くの主要ツールと簡単に連携できる
2.3. オートメーション機能
- トリガーとアクション – 特定のイベント(トリガー)発生時に自動でアクションを実行する仕組み
- カスタマイズ可能 – ニーズに応じて、トリガー条件やアクション内容を自由に設定できる
- 時間の節約 – 手作業の定型タスクを自動化し、チーム全体の生産性向上に寄与
2.4. フォーム収集・統合機能
- 簡単なフォーム作成 – ドラッグ&ドロップ操作で、アンケートやフィードバック収集用のフォームを手軽に作成
- シームレスなデータ統合 – フォームから集めた情報は、Airtableのデータベースに直接反映され、即時に分析・共有可能
- 多様なフィールドタイプ – テキスト入力やチェックボックス、選択肢など、多彩な形式でのデータ収集に対応
3. Airtable vs 他のノーコードデータベースツール比較
Airtableとその他のツール(Baserow、Google Sheets、NocoDB)の比較を表にまとめました。特に、Airtableがどのように差別化されているのかを理解しやすくするための参考にしてください。
4. 初心者がつまずきやすいポイント
4.1 Excel的思考とのギャップ
- つまずきポイント
- Excelは「セル(A1, B2など)」を自由に参照し合い、範囲指定で合計をとるのが当たり前。しかしAirtableでは「テーブル名・フィールド名」を柱に設計する。
- 具体例
- 「この行のA列からC列までの合計を計算しよう!」→ Excel:
=SUM(A2:C2)
- Airtable「フィールドとしてそれぞれの列を指定し、それらをひとまとめにしたFormulaフィールドを作る」
- 「この行のA列からC列までの合計を計算しよう!」→ Excel:
- 対策 / 注意点
- テーブル設計を事前にきちんと決める(どの列がどんな型を持つのか明確に)。
- 「セル」ではなく「フィールド全体に対して式を設定」する点を理解する。
- 複数の値を合計したい場合は、
SUM({Field1}, {Field2}, ...)
と記述。
4.2 フィールド型・バリデーションの違い
- つまずきポイント
- Excelは自由入力・自由書式である反面、ノーコードDBツールではフィールド型を「数値」「テキスト」「日付」「リンク」など事前に決める必要がある。
- 具体例「数値フィールドに文字列を入れようとするとエラーが出る」など。
- 対策 / 注意点
- 初めに用途をイメージし、フィールド型を適切に設定する
- 外部からインポートする際はデータ型が崩れないよう要注意
- データ型の厳密化はAirtableで超重要。エラーが起きたらまず「フィールド型」を確認!
4.3 データ集計・合計の方法
- つまずきポイント
- Excelでいう「合計行(SUM関数で全行を合計)」がすぐにできない。Airtableでは「Summary bar」を使ったり、「Group」機能で区分けしながら集計したりする必要がある。
- 具体例
- 「国語・数学・英語の合計」を出したいだけなら
SUM({国語}, {数学}, {英語})
。 - テーブル全体の点数の合計はSummary barを使って自動集計。
- 「国語・数学・英語の合計」を出したいだけなら
- 対策 / 注意点
- 1行ごとの合計:FormulaフィールドでOK
- 全行まとめて表示:Summary bar(ビューの下やグループの見出し部分に表示)
- シートの感覚で範囲指定はできないと割り切るとスムーズ
4.4 別テーブルとの連携・リレーション
- つまずきポイント
- 「シート間でVLOOKUP」感覚をAirtableに持ち込むと混乱する。ノーコードDBでは「Linked Record(関連付け)」を作り、その上で
Lookup
やRollup
などのフィールドを用いる。
- 「シート間でVLOOKUP」感覚をAirtableに持ち込むと混乱する。ノーコードDBでは「Linked Record(関連付け)」を作り、その上で
- 具体例
- Excel:
=VLOOKUP(検索値, シート2!A:B, 2, FALSE)
- Airtable:テーブル間リンクを設定し、関連付けされたフィールドをLookup/Rollupで取り込み。
- Excel:
- 対策 / 注意点
- 「リンクフィールドを作り、関連付けたいレコード同士を紐づける」
- そのリンクをもとに集計(Rollup)や値参照(Lookup)を行う
- データベース的思考:RDBのテーブル同士を紐づける感覚を学ぶ
5. AirtableのFormula機能:使い方と注意点
ここではAirtableでつまづきやすいFormula機能にフォーカスして、よく使う関数や設定画面のポイントを深掘りします。
5.1 Formulaフィールドの設定手順
- フィールドを追加ボタンをクリック
- 「Field Type(フィールドの種類)」としてFormulaを選択
- 「Formula」に演算式や関数を入力**(Excelのように「=」はいらない)**
- 保存 → 各レコードに計算結果が自動で表示
5.2 代表的な関数例
(1) SUM関数
- 目的:複数の数値フィールドを合算
- 書き方:
SUM({国語}, {数学}, {英語})
- 注意点:
- フィールド型が「数値」ではないと正しく動作しない
- 全レコードの合計は別途Summary barまたはGroup化で対応する
(2) AVERAGE関数
- 目的:平均値を出す
- 書き方:
AVERAGE({国語}, {数学}, {英語})
- 注意点:
- 未入力(空欄)のフィールドはどう扱われるかを把握(バージョンによって挙動が異なることも)
(3) IF関数
- 目的:条件分岐(「もし〇〇なら××」)
- 書き方:
例: 国語の点数が40点以上なら「合格」、それ以外なら「不合格」
IF(
{国語} >= 40,
“合格”,
“不合格”
)
- 注意点:
- 括弧の閉じ忘れに注意
- 文字列結合を使用する際には
&
を使う(Excelのような&
と同じだが、演算子が同じでもスプレッドシートと少し挙動が異なる場合があるので注意)
(4) DATEADD / DATETIME_DIFFなど日付関連関数
- 目的:開始日から〇日後を自動算出、2つの日付の差を計算など
- 書き方例:
DATEADD({実施日}, 7, 'days')
→ 実施日から7日後
- 注意点:
- 日付型フィールドのフォーマットを確認(「日付のみ」or「日時」まで含めるか)
- タイムゾーンのずれも考慮
DATETIME_DIFF({終了日}, {開始日}, 'days')
→ 日数を求める
(5)Link to another recordの使い方
続いてAirtaebl初心者が一番躓きやすいポイントでもある、ExcelのVLOOKUP的な動きをする「リンクレコード+Lookup」関数の使い方を具体例を用いて説明します。
例
- 「生徒一覧」テーブル:氏名、クラスなど基本情報を保存
- 「テスト結果」テーブル:各テストの得点、実施日などを保存
「テスト結果」テーブルで氏名を入力したら、自動的にクラスなどの追加情報を引っ張って表示したい、、、これがまさにExcelのVLOOKUP的な機能で、Airtableでは「リンクフィールド + Lookupフィールド」で実装します。
手順1: {名前} フィールドを「リンクされたレコード」に変更
1.「テスト結果」テーブルの {名前}
フィールド設定を開く
2. フィールドタイプを “Link to another record” に変更
3. リンク先として「生徒一覧」テーブルを選択
4. これにより「テスト結果」テーブルの {名前}
が、「生徒一覧」テーブルのレコードと紐づけられるリンクフィールドに変わります。Excelでいう「他のシートの該当行を検索して取得する」仕組みを、Airtableでは「Link to another record」で実現します。
手順2: Lookupフィールドで「クラス」情報を参照
- 「テスト結果」テーブルで新たにフィールドを追加
- フィールド名は「
クラス(参照)
」などにしてわかりやすくする - フィールドタイプに「Lookup」を選択
1. リンクされているフィールドに手順3で作成した {名前}
を指定
2. 取得したいフィールドに「生徒一覧」テーブルの {クラス、学籍番号}
を指定
3. 保存すると、同じ氏名を持つ「生徒一覧」のクラス情報が「テスト結果」テーブルの各行に表示される
これでLike to recordを用いたLookupフィールドの作成をすることができます。
6. 「Formulaがうまく動かない!」ときのチェックリスト
- フィールド名のスペルミスがないか
SUM({国悟}, {数学}, {英語})
のように誤字があるとエラー
- 括弧や引用符が正しく閉じているか
IF({在庫} = 0, "在庫切れ", "残り "&{在庫})
→ 一部欠けるとエラー
- フィールド型が正しいか
- 計算対象が数値型でない(テキスト型や日付型を足そうとしている)
- 日付や時刻のフォーマット問題
DATEADD
やDATETIME_DIFF
で正しく日付型が設定されているか
7. 追加で押さえておきたいこと
- プライバシー保護とデータ管理:自己ホスティングならば社内にデータが閉じるが、クラウドの場合はセキュリティポリシーを確認する。
- 他ツールとの連携:ZapierやMake(旧Integromat)などを活用すると、自動処理の幅がさらに広がる。
- スケールアップ / チーム拡張:チームメンバー数やテーブル数が増えた際のライセンスコストやサーバースペックを検討する。
8. まとめ:ノーコードDBを味方につけよう
Excelからの移行当初は「どこに数式を書けばいいの?」など戸惑いがちですが、「セル」ではなく「フィールド全体に対して設定する」という概念さえ掴めば、ノーコードデータベースの魅力を存分に引き出せます。業務やプロジェクト管理、チームでのコラボレーションを一段上のステージに引き上げるため、ぜひAirtableを活用してみてください。
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