1. はじめに
いま、AI(人工知能)の活用は企業における競争力の源泉になりつつあります。ChatGPTなどの生成AIツールが続々と登場し、「これこそが未来だ」と大きな注目を浴びました。しかし実際に導入を進めると、嘘をつくAIや汎用性の低いモデルに悩まされ、「本番運用には使えない」という声も少なくありません。
こうした状況を踏まえ、私自身が強く感じているのは、「AIの本当の力を引き出すには、自社データとの連携が欠かせない」ということ。たとえ高度なモデルでも、企業独自の専門用語やノウハウが学習されていなければ、想定通りの成果を得るのは難しいからです。
本記事では、この“期待外れ”を回避し、“嘘をつかない”AIを育てて本番環境で成果を出すための具体的なヒントや事例をご紹介します。
2. なぜこのテーマを書くのか
私自身、事業部門を統括する立場で数々のAIツールに投資してきました。けれども、嘘をつくAIや汎用性のないモデルによって何度も痛い目を見たのです。そんなとき耳にしたのが、
「嘘をつくAIは大企業の本番環境では使用できない」
UnifyAppsのCEOパヴィター・シン氏の言葉――
まさにその通りだと痛感しました。企業のKPIや業績に大きく貢献できるかどうかは、AIそのものの優秀さよりも、自社が持つユニークなデータといかに“正しく”つなげるかで決まるといっても過言ではありません。
また、ChatGPTをはじめとした生成AIツールが注目を浴びるなか、「思ったより使えなかった」「本番でどうやって運用すればいいのかわからない」という声も散見されます。こうしたジレンマを解決するキーポイントこそが、自社データとAIを連携するための基盤づくりです。
3. この記事のポイント
- AIブームなのに「期待外れ」になりがちな理由:ChatGPTなどの生成AIに期待を寄せながらも成果が出にくいのはなぜか。そこには「企業独自のノウハウが学習されていない」という構造的課題があります。
- UnifyAppsの事例から学ぶ、データ統合のメリット:2024年にシリーズAで2,000万ドルを調達したUnifyAppsの快進撃から見えてくる、「嘘をつかないAI」をつくる仕組みとは何かを解説します。
- 小さく始めるアプローチでAI導入を成功させるヒント:パールグローイング法(小さく始めて大きく育てる)というステップを踏めば、リスクを抑えながら“本番でも使える”AIをスムーズに導入できます。
4. AI活用にまつわる“期待外れ”の声とその背景
「本番環境では役に立たない」
ChatGPTなどの生成AIが登場してからというもの、「AIを導入さえすれば業務が革新する」と期待する企業は増えました。しかしふたを開けてみると、「業界特有の文脈や社内ノウハウを理解できない」「回答が曖昧でハルシネーションを起こす」などの問題が顕在化。
これらの原因のひとつは、AIが公開データでしか学習していないため、企業固有の知識を学習できていない点にあります。結果として、
- コスト削減効果が想定より低い
- 部門横断でのデータ連携がうまくいかない
- 新規事業創出や売上拡大に直結しないといった“期待外れ”が生まれ、経営判断の中でもAI投資の優先度が下がりがちです。
“嘘をつくAI”が及ぼすリスク
AIがハルシネーションを起こすと、あたかも本当のように誤情報を出してくるため、信頼性を損ないかねません。特に大企業であればあるほど、誤情報が与えるダメージは大きく、ブランド価値の低下につながるリスクも抱えています。
5. 試行錯誤の物語
ChatGPT登場の際、私も「これがあれば社内の質問応対が劇的にラクになる」「資料作成が自動化できる」などと大いに期待していました。
ところが、実際にテスト環境で使ってみると、微妙に間違った回答が多かったり、専門用語の意味を理解していないことが判明。社内用語やプロジェクト履歴が一切反映されておらず、まるで別次元の回答をすることもしばしばでした。
とりわけ辛かったのは、「AIを導入したい」という経営層の要望と「本番では使えません」という現場の声のギャップです。どちらの意見も正しいだけに、どうやって埋めればいいのか、苦悩の日々が続きました。
6. キーポイントは“自社データ×AI統合”
海外事例:UnifyAppsの急成長
こうした問題を解決する一つの事例として、注目を集めているのがUnifyAppsです。同社は2024年11月にシリーズAで2,000万ドル(約31億円)を調達し、評価額は156億円を突破。すでに世界最大級の銀行を含む20社以上で導入が進んでいます
評価額1億ドルの生成AIアプリ統合プラットフォーム「UnifyApps」(Forbes JAPAN) – Yahoo!ニュース
彼らの強みは、企業内部に点在するSaaSや既存データベースをAPIでつなぎ、AIに“嘘をつかせない”形で実データを活用させる仕組みにあります。つまり、公開データに頼るのではなく、企業が独自に持つ顧客情報やノウハウを学習できるよう環境を整えているのです。
なぜ“自社データとAIの融合”が重要なのか
管理職の方が追い求めるKPI(コスト削減、売上拡大、成長率など)を向上させるためには、部署横断のデータ可視化や顧客行動の的確な分析、プロセス自動化が不可欠です。ところが、汎用AIだけでは企業ならではのノウハウや専門知識を再現するのが難しいのが実情です。
UnifyAppsの例が示すように、企業内に散在するデータを整理し、API連携で一元管理することで、AIのモデルに正しい知識を学習させる仕組みが実現できます。
7. 失敗→回避策の実例
よくある失敗パターン
- AI導入を大々的に宣伝して始めたが、データが整備されておらず誤回答連発
- 紙資料をデジタル化しておらず、必要な情報がAIに連携できない
- 部門ごとにSaaSがバラバラで、会社全体の知見が活用しきれない
小さく始める“パールグローイング法”
これらを回避するために重要なのが、「一気に全社導入しない」というアプローチです。大規模投資に踏み切る前に、まずは限定的なユースケースや部門でPoC(概念実証)を行い、小さく成功体験を積み上げます。
- 部門単位や特定業務でAI活用を試す
- たとえばクレーム対応部署だけ、営業チームだけ、など範囲を絞る
- 結果を数値で検証し、成果を可視化
- 応対時間がX%削減、リード獲得数がY%増、といった具体的なKPIを示す
- 横展開でじわじわ拡大
- 実績を踏まえ、連携するデータや部門を少しずつ広げていく
このステップを踏めば、大きなシステム投資で一度に失敗するリスクを避けながら、段階的にAI活用を社内に根付かせることができます。
8. 経営判断を支える「数字」と「具体性」
導入検討をする際には、必ず投資に見合うリターンを示す必要があります。そこで有効なのが、短期間のPoCで実績をつくり、それを数値化して社内プレゼンするという方法です。
- 例:問い合わせ対応コストが○%削減できた
- 例:新規リード獲得数が○%増加した
これらの具体的数字があれば、上層部も「これは投資する価値がある」と判断しやすくなります。また、PoCの時点で問題点が見つかれば、導入拡大前に修正できるのも大きなメリットです。
9. まとめ――AIブームの先にある本当のビジネス価値
AIブームは依然として盛り上がりを見せていますが、ただ「流行だから」と導入するだけでは、多くの企業が“期待外れ”に終わってしまいます。UnifyAppsの事例が示すように、企業内のデータを整理・連携してこそAIは真価を発揮するのです。
特に管理職の方々には、コスト削減、売上拡大、成長率向上といった複数のKPIを追う必要があります。AIを本当に役立てるためには、企業独自の知見やノウハウをモデルに“正しく”組み込まなければなりません。
とはいえ、いきなり全社規模で大掛かりなプロジェクトを立ち上げるのはリスクが大きいのも事実。そこで、まずは特定の業務や部門でPoCを行い、数値化できる成果を出す――パールグローイング法が大いに有効です。
「AIの未来は“嘘”を許さない。本物のデータが、本物の競争力をつくる。」
企業に眠っているデータを整理し、それをAIに正しく学習させるプロセスこそが、これからのビジネス価値を大きく左右するといえるでしょう。
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